日本におけるキリンの飼育に関する調査

発行年・号

1969-11-01

文献名

日本におけるキリンの飼育に関する調査
(SURVEY ON THE GIRAFFES IN JAPANESE ZOOS Tama Zoological Park. )

所 属

東京都多摩動物公園

執筆者

ページ

18~20

本 文

日本におけるキリンの飼育に関する調査
(1968.11.21受付)
東京都多摩動物公園
SURVEY ON THE GIRAFFES IN JAPANESE ZOOS
Tama Zoological Park.
今回行なった”キリンに関する調査”は2回目のもので,第1回の調査報告は,第10回獣医ならびに飼育技術者研究会の席上において口頭報告がなされ,その報告記事は動物園水族館雑誌,4巻4号に掲載されている.
日動水協の研究会において,毎年行なわれている宿題研究に同一の動物種を選んだことははじめてであるが,今回行なった“キリンに関する調査”は,前回なされた調査の再調査の意味を含め前回行なった調査後のキリンの飼育の実体を知るために行なったものである.
なお今回の宿題研究は第15回獣医ならびに飼育技術者研究会のにおいて多摩動物公園が担当することになり,その口頭報告は第16回の同研究会において行なった.前研究会の開催場所の関係から,調査に要する期間は1年間に限られたが,各園館の協力が得られ調査ができたことに感謝の意を表する.
調査の対象と方法
今回行なった調査では,前調査後に輸入あるいは国内で審殖したキリンを主に調査の対象としたが,前回の調査時点よりひきつづき飼育されいる個体,あるいは調査期間内にそのような個体が死亡しているものも含んでいる.
調査期間は1961年4月1日より1968年3月31日までとし,対象となった個体は日本動物園水族館協会加盟園館に飼育されているものとした.
調査の内容は,1)入園年月日あるいは出産年月日,2)性別,年令,3)飼育経過期間と健否の別,4)亜種および産地,入手経路あるいは出生場所5)飼育場所の面積,寝小舎の床材,6)保加温装置の種および稼動状況,7)規準温度および最低外気温,8)死亡個体の死因,9)個体の産歴と妊娠期間,10)疾病などの記録,11)現在または死亡当時の飼料処方および給餌要領,12)運動状態,以上の12項目とし各個体ごとのカー ドを作成して行なった.
カードの発送は,協会年報により年次別にキリンの飼育頭数をあらかじめ知り,飼育経験あるいは現在飼育している園館に対し別紙記載要領を附して行なった.
また飼育経験のない園についてその確認を得るべく,解答のハガキを附して発送した.調査の対象となるべき個体のほかに,農林省動物検疫所より調査期間内に検疫を行なわれたキリンの頭数,および死亡した個体などの資料をいただいた.
表1は調査の対象となった個体数である.その数は80例であり前回の調査における83頭とほぼ同数である.
表1.調査の対象となる個体数
表Ⅱは調査の対象となった園とその解答率である.これによると飼育あるいは飼育経験のある園は解答率100%であり,飼育していない園の解答が96.8%,計98.2%と高率を示しており,この調査の信頼度を高めている.
表Ⅱ.調査の対象となった園とその解答率
表Ⅲ.調査期間内に検疫を可けた個体
輸入されたキリンの生存率と死亡時期
表Ⅲは調査期間内に各地の動物検疫所において検疫をうけたキリンであり,表示Ⅳは調査調査期査期内に動物輸入されたキリンでその生存あるいは死亡を年次別に示したものである.1991年より1968までに動物園に輸入されたキリンは26頭であり,内18頭69.2%が生存している.
次にこれらの輸入されたもの,あるいは調査期間内に出産のた個体の月別の死亡を見ると表下の通りとなる.
前回の調査において6ヶ月未満で死亡した個体は,動物国における飼育技術による原因よりキリン側にその要因があるとの解釈のもとにその月別の死亡を見ているが今回の場合6ヶ月未満で死亡した個体は後にものべるように園内で生産されたのが大部分であり,前回の解釈とかならずも一致するものではないが,月別の死亡では2月あるいは3月が多く次いで8月が多い.がしかし夏期あるいは冬期に大別すると,前回同様今回も若干数であるが冬期にその死亡が多い.
また前回においては12月,1月に死亡数が集中していることを指摘しているが,今回の場合2月に最も多い死亡数を示している.これらは解釈の差はあるが,キリンの死亡は冬期に多いことが考えらる.
死亡の原因について
調査期間内に死亡した32例につきその死亡原因を報告により整理したものが表Ⅵである.
前回の調査においては死亡原因の重要なるものとして栄養失調症をあげ,その数は50例年16例,32%を示しているが,今回の調査においては32例中2例にすぎない.また前回の調査においては栄養失調症が死因となった16例のうち10例が入国6ヶ月以内に死亡したことになっているが,今回の場合死亡までの飼育期間3年という個体にのみ栄養失調症が2例見られている.
飼育経過から見た死亡個体については,前回同様6ヶ月以内(今回は我が国で出産した個体も含んでいる)に死亡した個体が最も多く,全体の25%をしめているが,この中には新生仔死亡と考えられるものが3例含まれており,伝染病(放菌線症),事故,消化器系,不明などがそれぞれ1例づつ含まれている.
全体的に見た場合,消化器系で死亡したものが12例あり,全体の36.5%を示している.これらの消化器系での死因は,前間あるいは腸管の疾患にわけられるが,飼育年数では4年以内のものが7例,8年以後が5例となっている.死亡時における飼育年数は6ヶ月以内が8例最も多く,次いで1年,3年以内がが5例で,その他は数値的には変化がとぼしいが,飼育年数5年以内に21頭,65.6%が死亡している.
調査期間内に我が国で最も長く飼育された個体が死亡している.これは東京,上野動物園に飼育されていた雌の個体で,20年6ヶ月20日であった.
表Ⅳ.調査期間内の入園数とその生死
表V.月別の死亡( )内は調査期間内に輸入された個体
表Ⅵ.死亡原因と飼育経過年
表1.国内産の個体数
出産について
前調査においては出産の問題について何らふれていないが,今調査においては表前の通り調査期間内に21頭の出産が記録されている.
21頭中,雄が9頭,雌は12頭であるが,このうち8頭(♀3,♂5) 38%が死亡している.
また調査前には3頭(♂1,♀2)が出産しているが,今調査中にはその7倍にも増加している.このことは出産可能な個体を安定した状態で飼育できるようになったとも推測される.
表Ⅷは年次別の出産頭数とその生死の別であるが,1964年頃において若干その頭数が増加している.また国内で出産した個体の死亡時の年令は表Ⅸの通りで,10頭中7頭が6ヶ月以内に,またその内3頭が出産後10日以に死亡している.4年が2例,20年以上が1例見られるが,国内産の死亡個体については6ヶ月以内が大多数であり,この事実は妊娠獣の健康管理あるいは妊娠回数などと関係があるものと考えられる.
表Ⅷ.調査期間内に出産した個体とその生死
表Ⅸ.国内産の死亡年令
次に出産回数を調べて見たのが表Xであるが,これによると5回以上の出産歴のある個体は調査時点において見られない.現在もなお,生存している個体においては4回が2例,5回が1例あり,5回以上の出産歴もあろうと考えられるが,数多くの妊娠を経験させることはその母獣にとっても出産した仔供においても良いことではないことは当然のことであり,事実5回出産歴のある個体において4頭までが出産後短時間で死亡していているものがあった.
表X.妊娠回数
表Ⅶ.月別の生産
次に妊娠期間を調べたが,回答中日数を明確に記したもの11例(表Ⅺ)についてその平均を求めたところ451日であった.これはロンドン動物園で発表した443日より若干長いようにも見られたが,11例中最短,最長をのぞいた平均では 443日となり,キリンの妊娠期間はほぼ440~450日のの間であろうとの結果がでた.また国内産24例につきその月別の出産を見たが,8月より10月にかけてやや多いように見られる.4 月をのぞき周年見られているところから出産時期は一定でないようであるが,例数が少くないため今後の調査をまたなければならない.参考のためロンドン動物園とサンフランシスコ動物園における月別出産を比較して見たが,ロンドン動物園における40例では周年出産しているようである.
表Ⅺ.妊娠期間
飼料処方について
前回の調査おいてに飼料処方の検討方法として澱粉価(以下S.V.とする)を用いているが,今回も前回と同様の方法を用いた.他の方法による検討も考えたが,キリンの場合,その体重が不明であり使用に不適と考えられた.
今回飼料処方の検討対象としたものは調査期間中生存していた個体44例,死亡していたもの26例,計70例である.
生存している個体44例については図1の通りで,50%近くがS.V.4000~5000の間であった.これは前回の調査と同様の価である.
次に死亡個体については図Ⅱで示したが,前回と同様,S.V.値が3000~4000が多く,後は平均していた.(図Ⅲ)
前回の調査において,キリンの死亡原因の最も重要なるものとして栄養失調症をあげ,その結果とし,S.V.値を4000g以上必要であるとの結論を下しているが,今調査において生存している個体についてはS.V.値4000~5000gが最も多く,前回の調査の結果が有効に生かされていることがわかる.
図Ⅳは出産歴とS.V.値の関係を見たものである.図に示す出産歴のない個体は,4年以上飼育されその間に雄の個体も飼育されており妊娠が可能であろうと思われる個体を選び出し,出産歴のある個体と比較したものであるが,いずれにおいてS.V.値4000~5000gが多く著しい変化は見られていない.今調査の時点においては出産歴のない個体とS.V.値の関係は乏しく,他に原因があろうと推測された.
図1 生存個体の澱粉価
図2 死亡個体と澱粉価
図3 死亡個体と生存個体の澱粉価
図4 出産歴と澱粉価
おわりに
この調査にあたり協力を受けた各園館とともに快く資料を提供下された農林省動物検疫所,小山国治調整課長に感謝の意を表する.
要約
この報告は日本動物園水族館協会獣医ならび飼育技術者研究会の命をうけ東京都多摩動物公震が1961年4月1日より1968年3月31日までのわが国におけるキリンについて調査したものである.
1.調査の対象としたものは調査期間中飼育飼育されている,または死亡した個体で得られた資料は80頭分で,調査期間内に26頭が輸入されている.
2.調査期間中に輸入された個体の生存率は69.2%である.
3.死亡原因については消化器系の疾患が最も多く,36.5%である.6ヵ月以内に死亡したのは32例中8例25.0%で,5年以内に21頭65.6%が死亡している.
4.調査期間内に21頭出産しており,内38.0%が死亡している.調査期間前に生まれた2個体を含めた死亡10例については,6ヶ月以内に7例,内10日以内は3例が死亡している.
5.出産回数は511例が最も多いが,出産例の多い母獣の仔の生存率が低い例が見られた.
6.妊娠期間は11例の平均451日であるが最高最低を除いた平均では443日で,440~450日との値を得た.
7.飼料処方についてはS.V.値4000~5000gが最も多く,前回の調査が有効に生かされていることが判明した.

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